世界遺産旅行記・その2
人気の連載・コラム > 世界遺産旅行記・その1 > 世界遺産旅行記・その2

日刊スポーツ新聞社提供の世界遺産旅行記「見て聞いて思った世界遺産」シリーズ。
このページは、世界遺産旅行記<その2>です。
◆世界遺産旅行記・その2メキシコ・ソチカルコ、メキシコ・サカテカス歴史地区、メキシコ・テオティワカン(上・下)
◆世界遺産旅行記・その1 中国・青城山と都江堰、中国・臥龍、イタリア・ピサのドゥオモ広場
メキシコ・ソチカルコ
【世界遺産旅行記:メキシコ・ソチカルコ】 2008年8月14日更新
「これから、登ったり下りたりの連続になるので、覚悟してね」
メキシコシティーから車で2時間ほど。フリーウエーを通って、霧に包まれた峠を越えて、ピラミッドが点在しているという山の稜線に、カスティーヨ夫妻に連れられてきた。
遺跡は「ソチカルコ」という。
駐車場があるところに小さな博物館があるので、マリオさんがいろいろ説明してくれたが、身ぶり手ぶりのスペイン語で多くはなぞのままで「フローラ」が何度もでてきたので、花が関係あるのだろう。
解説文とガイドブック(あまりページはないが…)を併用して、なんとなく分かったのはソチカルコは「花の家」という意味で、7世紀ごろから10世紀ぐらいまで栄えたという。
シティー近郊のテオティワカンとアステカ文明の中間あたり。なぜか、ヒトデの形(星の形?)をした焼き物もあった。
天気はいいのでハイキング気分で歩き始めたが、言われたとおり、登ったり下りたりしながら丘の上を目指す。まず目の前にピラミッドのような建物が現れた。背後に丘があって建物が見えるので平たんな印象があるが、その脇を登っていくと、かなりの高さなのが分かる。
ソチカルコのメーン建物はまだ上にある。また登ったり下ったりを繰り返し、頂上(といっても頂は周りにたくさんあるが)にでると、小ぶりの台形状の建造物がある。「ケツアコアトルの神殿」と呼ばれる。
赤っぽい石組みで、4つの壁面にびっしりとレリーフが彫り込まれている。ケツアコアトルは「羽毛があるヘビ」。テオティワカンでも神だった。そのほかにも、人物や文字、模様が複雑に組み合わさって彫られていて、保存状態は非常にいい。階段があったので、基壇の上に登ってみた。平らで何もなかったが、かつてはここで儀式などをしたのだろうか。
「おもしろいところへ行こう」というのでついていく途中、両側が壁になっている細長い広場を通った。
「フットボール場」だという。真ん中に丸い穴があいた巨大な鍵穴のような石が地面に転がっている。
本来はこの鍵穴、壁に刺さるように突き出ていて、そこのボールを通す競技が行われれていたという。
マヤでは生け贄を決めるために行った競技だったと記憶しているが、その原型はこのあたりだったのか、マヤから持ち込まれたのか。いずれにしろ、交流があったことは確かなようだ。
岩山の下にある洞穴のような入り口に着いた。人工的につくったトンネルだそうで、ここが「おもしろいところ」だという。管理人がいて、カギを開けて中に入れてくれた。
ちょっとした解説を聞きながら(もちろん、よく分からないが)歩いていくと、少し広いところで止まった。
上を見ると、天井が高くなっていて、穴が開いている。電気を消すと、真っ暗なトンネル内に、天井から光が差し込んで、地面を照らす。手をかざすと、影がまっすぐ下に落ちる。
実は太陽の動きを観察する「天文台」と役目を果たしている場所だというのだ。
年に4日だけ、太陽がこの穴の真上に来るそう。行ったのは8月上旬だったが、ほんの数日前に真上に来た日があったそうで、まだ垂直に近い光だったわけだ。これも、カレンダーの一種なのだろう。
発掘途中の遺跡も多く、日本ではまだあまり知られていないが、メキシコ古代文明の奥深さを感じた。
記事の提供 『日刊スポーツ新聞』

中国・青城山と都江堰
-
▲ソチカルコのピラミッド
緩やかな傾斜をもつピラミッド。 -
▲ソチカルコのピラミッド
4面全てにレリーフが彫られた基壇は、保存状態がいい。 -
▲ソチカルコ競技場
地面に落ちている穴の開いた鍵穴状の石を壁に取り付けて、穴に球を通す競技が行われた 。
メキシコ・サカテカス歴史地区
【世界遺産旅行記:メキシコ・サカテカス歴史地区】2009年1月6日更新
中世の街なみが、朝日を浴びて赤く浮かんで見える。前夜、メキシコシティを出発し、夜行バスに揺られて午前7時。山に囲まれた盆地のようなところに、サカテカスの街が広がっていた。「ピンク・シティ」とも呼ばれているという。建物の多くが、ピンク色の砂岩でできているから。
街の中心部にあるホテルのレストランで朝食をとって、外に出たころには、日が高くなり始めていた。赤かった街は、たっぷりの陽光で白っぽく感じる。まぶしすぎるからか。同行してくれたマリオさん、カルメンさんのカスティーヨ夫妻もしっかりサングラス。
ホテルの斜め前方、100メートルぐらいのところに、さっきから気になっていた建物があった。
サカテカスの傑作、世界遺産になっているカテドラル(大聖堂)。遠くから見ても、それこそ、オーラを放っているかのように目立つ。正面の壁一面、さまざまな彫刻で飾られている。人物像が主体だが、細かな模様が、くっきりと描かれている。2つの塔は、少しくすんでいるもののピンクシティの象徴らしく、鮮やかな色を残している。欧州のバロックと先住民の装飾が融合した「ウルトラバロック」という様式だという。
この街は「コロニアル・シティ(植民都市)」とも呼ばれる。16世紀、中南米はご多分に漏れずスペイン人によって征服されたが、ここも例外ではなかった。悪いことに(?)良質の銀鉱山が見つかったものだから、先住民は改宗させられた上に、鉱山で働かされ、ほとんどの人たちが亡くなったという。スペイン人がそうして得た巨額の富をつぎ込んで150年近くかけて建てたというから、大きな犠牲の上に作られたといえる。内部はかつては金銀の装飾があったが、いまはなくなっている。その失われた輝きを想像させてくれるのが、カテドラルの正面から小道を少しのぼったところにあるサントドミンゴ教会。大きさはカテドラルの半分ぐらいだが、内部には金を使ったきらびやかな装飾が多く残されている。
サカテカスの名所はもう1つ。街を見下ろす岩山だ。「ブーファ」という。
上までは、バスで行った。頂上の広場には、3体の銅像と教会があった。サカテカスはメキシコ独立運動の舞台にもなったところだという。そのときに活躍した3人の英雄の像だというが、分かったのはパンチョ・ビラ。そういえば、映画を見たことがある。この岩山から見るサカテカスの街が、またいい。ピンク砂岩の建物が建ち並び、しかも中世の様式そのまま。その中でも、やはりカテドラルは目立つ。帰りは、土産物の露店が並ぶ坂を少し下りた乗り場から、ロープウエーに乗った。街の真上を下りていくので、眺めの良さは保証する。
夜のサカテカス。カテドラルをはじめ、主立った教会や中世建築物がライトアップされる。太陽の光を浴びた街とはまた違った趣が、漂う。銀鉱山の栄華、先住民の苦しみが、まだ街に混在しているような気がした。
記事の提供 『日刊スポーツ新聞』

メキシコ・サカテカス歴史地区
-
▲サカテカス・カテドラル
ピンク色の石でつくれられた教会は、街のシンボルになっている。 -
▲サカテカス・カテドラルの壁
面壁一面に聖人などの精緻な彫刻がほどこされている。 -
▲サカテカスの丘
街の背後にそびえる岩山の頂上では、パンチョ・ビラなど英雄の像が街を見下ろしている。
メキシコ・テオティワカン・下
【世界遺産旅行記:メキシコ・テオティワカン・下】2008年9月20日更新
「雨の神様」は、ロボットにしか見えないのは、私だけだろうか。
テオティワカンというと、大ピラミッドが有名だが、20万平方メートルという遺跡の敷地内には、たくさんの遺構が点在している。一番印象に残ったのは「ケツァルコアトルの神殿」だった。南側にある一番大きな駐車場から遺跡に入り、「死者の道」を横切って進むと、小さなピラミッドがある。これがその神殿。小さいといっても、高さ22メートルある。保存状態のいい遺跡だという。
「ケツァルコアトル」とは、ケツァルは緑の羽根の鳥、コアトルは蛇の意で、羽毛がある蛇。農業神、創造神といわれる。神殿の壁には、たくさんのケツァルコアトルの顔の像がはめ込まれている。口を開けて牙をのぞかせている姿は、蛇というよりも、ピューマやライオンのようにみえるのだが・・・。その神の横に「トラロック」という雨の神がはめ込まれている。ケツァルコアトルと同じぐらいの数なので、この神殿、実は2つの神を祀っているのでは。どちらかというと、トラロックの方が、ユーモラスというか、主役といってもおかしくない。ともにテオティワカンの時代から崇拝され、名前はアステカの時代の名前だが、マヤではそれぞれククルカン、チャックという名前で呼ばれている神だという。この2神についてはそれぞれアステカ神話があるが、ここでは省く。
さて、トラロックを見ていただきたい。目が4つあるような感じだが、上の2つは髪飾りか。神様なのでどんな姿をしていてもいいのだが、映画などでみるロボットに似ている。アステカ人は干ばつを避けるため、雨をコントロールするトラロックに生け贄をささげていたそう。太陽のピラミッドの向きはプレアデス星団(スバル)や金星に関係しているなど、テオティワカン成立にあたっては、宇宙規模の説があるらしい。うーん、トラロックは宇宙人のロボットかあ?などと考えているうちに、マヤ文明パレンケ遺跡の宇宙飛行士(?)やナスカの地上絵などが浮かび、死者の道は滑走路に見えてきて、頭の中では壮大なイメージでいっぱいになってきたのだが、考えすぎか。
月のピラミッドの隣には「ケツァルパパトルの宮殿」「ジャガーの宮殿」の遺跡がある。またでてきた舌を噛みそうな「ケツァル」と蝶の意のパパトルで、鳥の頭をした蝶。聖獣だという。アステカの人たちは羽のあるものが好きだったようだ。柱にその聖獣を見つけたが、目に黒曜石がはめ込まれていた。ジャガー宮殿にかなり鮮明に色が残っている壁画がたくさんある。ピューマなどが描かれているというが、かなりデフォルメされているのか、あまりはっきりと分からなかったのだが・・・。アステカ神話はあまりなじみがないが、メキシコに行く機会がある方は下調べをしていくと、もっとよくわかるだろう。
土産物を売る人たちがいる「死者の道」の両側には、数多くの遺構が残っている。残念ながら、廃虚から復元したときにコンクリートなどを使っているが目につくので、古さという点ではあまり実感できないが、ピラミッドを中心に神殿の彫刻や壁画などをゆっくり歩きながら(空気も薄いので)見ていると、2000年前後も前の造形に感心させられることには間違いない。
記事の提供 『日刊スポーツ新聞』

メキシコ・テオティワカン・下
-
▲テオティワカン・ケツァルコアトル神殿
神殿の壁面には、2つの神の像が数多く刻まれている。 -
▲テオティワカン・ケツァルコアトル神殿
2神の1つ、雨の神トラロック。ユニークな姿をしている 。 -
▲テオティワカン・ケツァルパパトル神殿
月のピラミッドの隣にある神殿の柱にある聖獣「鳥の頭をした蝶」のレリーフ。
メキシコ・テオティワカン・上
【世界遺産旅行記:メキシコ・テオティワカン・上】2008年9月20日更新
「ウノ、ドス、トレ~ス」という声で、車の前方を見ると、巨大なピラミッドが目に飛び込んできた。
メキシコシティーから車で・・・渋滞があるので、正確な時間は不明だが、2時間弱北上し、高速道路の「ピラミデ(テオティワカン)」出口の手前、緩やかに上って、前が開けたところで、案内してくれたカスティーヨ夫妻が、大声で知らせてくれた。
メキシコといえばアステカ文明だが、そのアステカ人たちが13世紀ごろに見つけたときは廃虚だったという。それでも、壮大な建築物の数々に、神が造ったに違いないとして「テオティワカン(神々の都)」と名づけた。紀元前2世紀中~7世紀中ごろまで栄えていたというテオティワカンは、遺跡の総称。敷地内には幅40メートル、長さ4キロに及ぶ南北の「死者の道」と呼ばれるメーンストリートに、「ピラミデ・デ・ソル(太陽のピラミッド)」「ピラミデ・デ・ルナ(月のピラミッド)」やさまざまな神殿などが点在している。歩き始めたのは、南側の駐車場から遺跡に入って、北端にある月のピラミッドまで約2キロのところから。標高は2300メートル、真夏の太陽にさらされて日蔭は期待できないので、水分補給は欠かさないようにしたい。
2つの大ピラミッドに上ってみた。
まずは「太陽のピラミッド」。死者の道を北へ向かって右手にそびえている。高さ65メートル、底辺は222メートル×225メートル。世界で3番目の大きさというから、エジプトのクフ王、カウラー王のピラミッドの次ということか。エジプトのピラミッドはきれいな四角錐で上れないが、こちらはすそ野が広いなだらかな山という感じで、頂上まで248段の階段がある。ただ、遠めにはなだらかに見えるが、いざ階段を上り始めると意外に急こう配。下りるのが大変だと思いながら、薄い空気を精一杯吸って上った。
頂上はほぼ平坦。たくさんの人が腕時計と頭の上の太陽とを交互に見ている。そういえば、一緒に上ったカスティーヨ夫妻も時間を気にしていた。なぜ? 夫のマリオさんは水のペットボトルを置いた。「影がないでしょう」。8月1日、正午2、3分前ぐらいだったが、ペットボトルの周りに影がない。え? 思わず太陽を見上げた。このピラミッド、実は正確な南北から東に15度ほどずれていて、年2回正午に太陽が真上にくるようになっていると後から知った。なぜなのかは諸説あるらしいが、その前後の日もほぼ真上に位置するので、上った時もちょうどその時期だったということ。どこからともなく、カウントダウンが始まり、正午になった瞬間、妻のカルメンさんが「こうするの」と、手の平を上に向けて両手を太陽に向けて上げた。周りの人たちもそうしている。「太陽からパワーをもらうの」。太陽のピラミッドの意味がわかった気がした。
さて「月のピラミッド」。死者の道を北へ進んだ突き当たり(というより、月のピラミッドから死者の道が始まっていると言った方がいいかも)に建っている。こちらは高さ47メートル、底辺140メートル×150メートルという。太陽のピラミッド同様、基壇を積み重ねているが、階段の傾斜はこちらの方が急。下を見ないようにして上がった。遺跡を修復しているのか、基壇の1段目までしか上れなかったのが残念。基壇の端に座って南側をみると、テオティワカン全体を一望できる。1キロほど向こうにある太陽のピラミッドより15メートルほど高台にあるので、高さは低いが遺跡全体を見下ろしているようなロケーション。頂上からだと、もっと感じるだろう。ここでは、主要な宗教儀式が行われていたとみられている。
記事の提供 『日刊スポーツ新聞』

メキシコ・テオティワカン・上
-
▲▲太陽のピラミッド
世界3位の大きさを誇り、頂上に立つこともできる。 -
▲月のピラミッド
死者の道から眺める。もっとも北に位置し、祭祀(さいし)がおこなわれた。 -
▲月のピラミッド
基壇を上がると、テオディワカン全景が広がる。左が太陽のピラミッド。
◆世界遺産旅行記・その1中国・青城山と都江堰、中国・臥龍、イタリア・ピサのドゥオモ広場










