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キャメルンからの手紙・連載(バックナンバー)

キャメルンからの手紙TOPページ(バックナンバー一覧) > キャメルンからの手紙バックナンバー55話~(アーカイブ)

キャメルンからの手紙

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【最新のお話】

◆キャメルンからの手紙◆第56話

【「1人1人の力が世界を変える」の巻】

文章:空羽(くう)ファティマ  絵:NILE 切り絵:海扉(かいと)アラジン

 

 人の心は弱い。こんなたとえ話がある…。あるアラブの国の王様が大きなパーティを開く事になり出席する国民は各自コップ一杯ずつお酒を持参し城の前に置かれたカメに入れる事になった。こんなたくさんの人が酒を入れるなら自分1人位、酒ではなくただの水を入れてもわからないだろうと思い、そして結局大きなカメに集まったのはただの真水だけだった…。この話を思い出したのは神戸の連続児童殺傷事件の犯人が出版した本がベストセラーになり増版までしたからだ。その結果、殺人を起こした彼の元には多額の印税が入るのだ。これってダメでしょう?アメリカでは犯罪者には収益が渡らぬようにサムの息子法という法律があるのに。犯行起こした年が14才という事とあまりに残酷な事件だったから人々が18年経った今もこの事件に関心を持つことはわかる。自分が読みたい本を本屋から買って何が悪い?と言うだろう。けれど出版前に遺族に了解も得ず本の収益は受けとらないという約束もせずに出版してしまったことはひどいと思う。この事に私が強く憤りを感じるのは震災で亡くなった愛梨ちゃんの本を書いたからだと思う。死に対する表現を何度も遺族の方に確認して大切な方を亡くした他の方達もこの本を読んでどう感じるかを考え抜いて何回も何回も手を加えた。もちろん全ての人に受け入れられる文なんて存在しないと知りつつそれでも遺族の方の心がもう今以上に傷つかない様にと自分の出来る限りの心をくだき祈りを込めて出版したものだった。なのにこの絶歌という本は遺族がこんなに出版中止を叫んでいるのにその心の痛みには応えずに増刷までした。本を買った人達は本を買う事で生じる印税の事や遺族の気持ちには深く考えを及ばず自分1人位ならたいした事はないという軽い悪気のない気持ちで買ったのだと思う。私の知り合いのカウンセラーの人も仕事に役立つと思い買って読んだと言ってたが後で悔いていた。自分だけなら大丈夫という気持ちが大きな害を生む事もある事を1人1人が自分の行動にもっと重みを感じて行動したら世界はもっと平和で美しくなるだろう。誰が見てなくても水ではなくお酒を入れる人で在りたい。他の人はだませても自分は自分のごまかしを知っているのだから。自分の事を好きでいる為に人は心を強く持たないとならない。時に人は弱いしずるくもなる。私だってそうだ。でも自分を好きでいる為に必死にがんばりたいとは思う。最愛の息子を亡くして傷ついている遺族の心の傷口に再び一般の人までが塩をぬるような行動は本当にお気の毒だったと思う。人間は本当はみな優しいと私は信じている。性善説を信じている。だから1人1人が自分の心が本当にやりたい事は何なのかに向かい合って行動したら私達の世界はすぐに幸せで満ちたカメで満杯になると思う。本を買った人を責めたいのではなくこの事をきっかけに自分1人が世界に与える力の大きさを考えてもらいたいと思いペンを持ちました。



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◆キャメルンからの手紙◆第55話

【「はじめてパパとママになった日」…命の選別、羊水検査あなたはどう考える?の巻】

文章:空羽(くう)ファティマ  切り絵:海扉(かいと)アラジン

 

 羊水検査が過去最多の2万件を越えた。ダウン症のリスクがふえる27%を占める35才以上の出産事情が関係しているのだろう。私自身、初めての妊娠が40才だったので、もし赤ちゃんに障害があったら中絶するとはリアルには考えてはいなかったが一応念の為、羊水検査をしようとも思っていた。子育てはどんな子でも大変だろうし私の様に自分のペースで生きてきたタイプの人間、しかも特に子供好きというわけでもない私が障害を持つ子なんて育てられる自信がなかった。神様は障害を持つ子のママには特別に愛のある強い心のママを選ぶと聞いた事があるので私にはムリだと神様も思うのだろうとも思ったりしていた。羊水検査をするか決める日が来た私達夫婦がその日に見たエコーの赤ちゃんの姿を今もはっきりと覚えている。今迄見ていた丸が1つ、の姿ではなく3ヶ月になったその姿は雪ダルマみたいに顔と体が2つに分かれていてそこにドラえもんみたいな丸いかわいい手足がついていて、それをパタパタ動かしていたのだ!「この子、生きてる!」
ものすごく胸キュンした。すっごく、かわいかった。1つの丸だった命がもうしっかり人間になっている…。障害があるとか、ないとか関係なくピッカピカに輝く命がそこには、映っていた。しかも、この子はこのおなかの中に今いて私がこの子のママなのだ…じんとした。なんともいえない幸せを感じた。この子を守りたいと初めて思った。一緒にそのエコーをみていた彼も私と同じ気持ちになったのがわかった。「障害があったら育てられるかな」と不安がっていた彼の姿はそこにはなかった。私達は黙ったまま心の中でパパとママになる決心をした。そして彼がドクターに言った。「検査はしなくていいです」…きっとあの瞬間に彼はパパに、私はママに本当になれたのだと思う。命を守り育てる事は決して簡単な事ではなく、まして障害がある子なら尚更だろうし出産前に検査をしたいと思う気持ちはよくわかる。事前に障害がある事がわかったら覚悟の上で子育てに臨める利点もあるだろう。でも、幸せな親子になれたかもしれないのに、自分には育てられないと思い尊い命を中絶してしまう人もいる。いろんな事情はあるだろうけれど命は返品出来る品物ではなく天からの授かりものなのだ、とママになってよくわかった。この命は必要、この命はいらないと命の選別する権利は私達人間にはないし持ってはいけないと思う。大自然と命の前に私達はもっと謙虚でいなくてはならないのではないか?あの時、私達はどんな子でも、その命を全てを受け入れる覚悟をした。もし不安から検査していたら、それは伝わり信頼関係や見えない何かが変わっていたかもしれない…。どんな子もそれぞれ悩みはつきないだろうけれど、あの日の雪だるまちゃんの姿はいつも私の心の中にあってママになれた瞬間のあったかな想いがママとしてのパワーを与えてくれている。ムカつく程ふてくされても、何があろうとママはあなたが大好きでこれからもずっとあなたの応援団長でいたいです。
あなたのママになれて幸せです。



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